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SS「Taste sweet」前編

2011.02.13*Sun*
いよいよ明日は、ヴァレンタインですね。
…って、多岐個人的にはまた今年もまーったく関係ないですが。
せめて高耶さんにはハッピーでいて欲しい…という願いを込めまして、
またしても性懲りもなくSSなど書かせていただきました。

SSなのに前編って…何?

とうとうレポ書きだけじゃ飽き足らず、
文章までもダラダラ書きが止まらなくなりました…orz。
しかもまだ後編全部書き終わってないしぃ。

ちなみに、拙宅の高耶さんてば、ものすごく恥ずかしがり屋です。
ですので、肝心の部分に関しては、まったく語ってくださいません。
そのあたりは、ご覧くださる方々のご想像にお任せいたします。
(って、何そのすっげー他力本願。)


よろしければ、↓"READ MORE"  からご覧ください。

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  『Taste sweet』 (前編)
--------------------------------☆

去年は日曜、その前は土曜日だったので、ことさら気にしてはいなかったが、改めてカレンダーを見て、今年はちょっとヤバいかな…とか思った。
何が…って、今日どっかの誰かが余計なものを持って帰ってこないかって事。
恐らくあいつのことだから、直接渡そうとするのに対しては、上手いこと断ったりして受けとりゃしないんだろうけど、席を外した隙に鞄の中とか、帰りの電車でこっそりコートのポケットとか、敵も手を変え品を変え、入れ替わり立ち替わりで攻めてくるだろうを避け切れるのかどうか…。
だからといって、一度手にしたものをその辺に捨てるなんてことも、きっとあいつの事だからできやしない。
やだからな、帰ってきてあいつの脱いだコートからコロンとか言ってちっちゃい箱が出てくるのなんか。
むかむかむか…っ。
あーくそっ、想像しただけで腹立ってきた。
オレはその勢いのまま、買ってきた柚をげしげしと擦りおろした。

今夜のメニューは味噌田楽。
大根と里芋は、だし汁で下味をつけてゆでて、こんにゃくもあっためて、ゆず味噌をつけて食う。
寒い時にはやっぱりあったかメニューだよな。
あぁ、でもこれなら今夜は日本酒の燗つけてやるか。
そしたら、もう一品肴になるようなものでも作ろう。
イカの塩辛があるから、セロリと一緒に炒めてもいいな。
そんな事を考えながら、キッチンのあちこちを開けたり閉めたり、鍋を火にかけたりしていたら、さっきのむかむかが少しだけ治まってきた。
料理が気分転換になるなんて、オレもだいぶこの暮らしに慣れてきたよなぁ…。

味噌汁用のなべに水を張ってたら、リビングとの対面式になっているカウンターテーブルの端っこにある深紅のリボンのかかった手のひらサイズの白い箱が目に入った。
今朝、目が覚めたオレの枕元に置いてあったヤツだ。

年度末試験も終わって、長い春休みに入ったオレに対して、夜のあいつは遠慮というものがない。
夕べも自分は翌日仕事だというのを忘れてるんじゃないかってくらい攻めてきて、最後気絶するようにしてオレは眠ってしまったんだ。
それでも何とか目覚ましなしでいつもの時間には目が覚めた自分を、オレは褒めてやりたいね。
高校行ってた頃は寝坊して遅刻なんてのが日常茶飯事だったオレが、あいつと暮らし始めてからというもの妙に目覚めがよくなった。

というよりも、とにかくあいつは朝が弱い。

400年一緒にいて、主君に遅れて起きることなど出来ないなどと言ってオレが起きる前に大抵は目覚めて身なりも整えてた奴なのに、今のこの状態というのは、体質的なものあるのかもしれないが、それよりも主従とかそういった柵があいつの中から消えた証拠じゃないかとオレは思っている。
今までの肩肘張った妙な緊張感が抜け、本当の意味での自然体で今あいつはオレのそばにいる。
だから、あいつを起こす事ができるのがオレは嬉しくってしょうがない。

ただし、それも素直にあいつが起こされてくれれば…の話だ。

まず最初はカーテン全開にして朝日を窓いっぱいに入れて、鼻先をつまんで「起きろ」と声をかける。
そうすると、寝ぼけてるんだかワザとなんだかしらないが(きっと後者だと確信はしている)、声をかけたオレの腕を引きずりこんでそのまま二度寝に持ち込もうとするんだけれど、そういった時の攻防戦の勝敗はオレの気分次第で…とりあえずそれを見越して余裕のある時間に起こしてる事だけは確かだ。
あいつが勝ったというかオレが負けてやった朝は、その後出掛けるまで分刻みでばたばたする事もあるけれど、朝から適度な運動をして、出すもの出してすっきりしてるせいなのか、実に機嫌よく出勤していく。
その代わり、こちとら朝からぐったりなんですけど、いいんですけどね。
だからといって、そうそう毎日負けてやってるわけでもなくって、オレだって一時限目の講義とってることだってあるし、午前中からバイトの時もあるから、そういった日は容赦なく腕を引っ張られた勢いのままボディーブローをかましてやる。
そうすると、小憎たらしいことに寝ぼけてるくせしてしっかり避けやがるんだ、あいつは。
「あなたの動く気配を読めなくてどうしますか」
まだ顔はぼーっとしたまんまで、半分あけきってない目で、そんな事言われても説得力はないぞ。
…まぁ、嬉しくは…あるけど。
いやいや、それはさておきだ。
これで起きてくれればめっけもんで、朝食の支度にオレがキッチンに一人で戻って油断してると、またしてもあいつは枕とお友達になってる事がある。
そうなったら、もう此方としても容赦は無用だ。
くるまってるシーツの上半分を引っぺ返し、形のいい後頭部から枕を引っこ抜く。
シーツを全部取らないのは、以前それをやって、男の真っ裸を拝む羽目になって、オレがげんなりしたからだ。
さすがに清々しい朝日の中で拝むもんじゃないだろ、あれは。
大抵はここまでくれば、あいつもようやく起きだしてくるんだけれど、一度だけそれでもまた眠ろうとしたことがあって。
仏の顔も三度まで。オレは最後の手段を打った。
「てめっ、いい加減に起きやがれっ」
さすがのあいつも脳内で直接最大ボリュームで怒鳴られるのは懲りたらしく、それ以来、なんとか起きるように努力はしているらしい。
やってみたら結構楽だったんだけどな、脳内感応で起こすの。
そんな調子で、オレの朝は弁当と朝飯の支度よりもまずあいつを起こすのが一番の仕事なわけで。
一応立派な社会人として世間様にみていただいている男が遅刻などというくだらない理由で評価を落とされるのは、何よりもオレが許せない。
毎晩寝る前には必ず目覚まし時計のスイッチを確認するのが日課になっていたはずだったのだけれど、昨夜は性急に事が進んで、あれよあれよの内に、オレもすっかり忘れてしまったんだ。

でも、自分で思っているよりもオレの体内時計は優秀だったらしい。
今日は月曜、あいつは仕事、と頭よりも身体が認識しててくれたらしく、オレはちゃんといつもの時間に起きることが出来た。
うんうん、オレってえらい。
定位置であるあいつの左の腋の下辺りから頭持ち上げて、いつものように時計のスイッチに手を伸ばしたら、いつもと違う感触があった。
なんだろと思って目をやると、そこにあったのがこの白い箱だったわけだ。
中身が何なのかは、もう見なくても分かるくらいなんだけれど、っていうか、あいつクリスマスと勘違いしてないか。

それにしても、一体いつこんなの買ってきたんだろ。
仕事から帰ってくるあいつから鞄を受け取って中に入ってる空の弁当箱を取り出すのはオレだから、先週の内に鞄の中に入ってなかったのは確かだし、連休前に、コートにもブラシをかけたからそのポケットに入ってなかったのも知ってる。
更に、この三連休は天気が悪かった事もあり、日がな一日べったりとあいつはオレに纏わりついてた。
唯一近所のスーパーに一緒に買い物に出かけたけど、あそこの売り場にはこんな高級品は売ってなかったし。
うーん、相変わらずこういう時のあいつの用意周到さには感心するよ。

昆布を入れた鍋を火にかけてから、オレは紅いリボンの結び目をつまむようにしてその箱を手に取った。
シュルンとなめらかに解けるリボンを床に落とし、そっと蓋をあける。
中はまるで宝石箱のようにリボンと同色の布張りをされていて、たった3粒、それぞれ少しずつ濃淡の違うチョコレートが収まっていて、2粒分の隙間が出来ていた。
既に朝の内に2粒は食べてしまった。
これを見つけたオレは、いつもの段取りなどすっ飛ばして、すぐに隣で寝ている男を起こした。
あいつは寝ぼけながらも、蕩けるような、此方が見惚れるような笑みを浮かべて、オレの頬に両手をあてて自分の顔に近寄らせた。

そのあとは…まぁ、今日はオレの不戦敗という事にしておこう。
結局、朝飯を作る時間すらなくなってしまい、枕元に置かれたままになっていたチョコが朝食代わりになってしまった。
しかも食べたのはオレだけで、お相伴と称して、オレの歯茎についたのを舐めとっただけで(ついでに口ん中もまんべんなく舐めとってくれたけど)、あいつはいつも以上にバタバタして仕事に出かけて行った。
弁当も作ってやれなかったし、あいつ今日ちゃんとメシ食ったかな。
夕飯も大根やこんにゃくだし、もう少し精のつくもんにしてやった方がよかったかな。
いやいや、昨夜が昨夜だったし、今朝もあーだったんだから、今夜は少しおとなしくしててもらおう。
残った3粒の内1粒を口の中に放り込んで、もう一度蓋をして床に落ちたリボンを丁寧に結び直す。
丁度味噌汁用のなべの湯が湧きはじめたところで、昆布を摘まみだし、今度はざるに入れた鰹節を当てる。
出汁をとっている間に、具用に乾物の入ったケースの蓋をあけて、そこにあったある物で、ふと思いついた。
まだあいつが帰ってくるまで時間はある。
材料も、オレの自分のおやつ用に買ってあるのがあるから、それ使えばできる。
女性陣の猛攻を逃れて帰ってくるであろうあいつに、ご褒美代わりになるかな。
オレは味噌汁をさっさと仕上げて、フライパンを取り出した。


(…後編へ続く)

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多岐美影

Author:多岐美影
何とか自分の手が届く範囲にてミラージュの世界を満喫したいと画策中。

生息地:江の島と箱根の間(小田原寄り)
性格:典型的な「O型乙女座」人間とよく言われる
ミラ歴:'94春~'96冬=ミラ第2部だけはリアルタイムその後13年のブランクを経て、2009年春再燃
前科:某ボーカリストの追っかけもどき約20年

ブログサイト:「天空の石」
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