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SS「Taste sweet」後編

2011.02.14*Mon*
また今夜も雪降ってます。
まさかホワイト・ヴァレンタインになるとは思いませんでした。
でも、多岐実家あたりは雪ではなく雨が降っているとのこと。
同じ相州でも違うんだなぁ…。

それでは、昨日に引き続きヴァレンタインSS後編をお届いたします。



よろしければ、↓"READ MORE"  からご覧ください。


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  『Taste sweet』 (後編)
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「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした」
いただきます、と同じくこの男はちゃんと食後の礼を欠かさない。
どんな料理だって、いつも美味そうに食ってくれて、しかもちゃんと最後に締めの一言をくれる。
料理を作る側としては、また次何を作ってやろうかと張り合いがでるというものだ。
心配してたコートからコロンもなかったけれど、食事の最中に訊いた今日の男の周辺は案の定かしましいどころの騒ぎじゃなかったらしい。
「とりあえず、少しでもその気のある人は直接渡そうとするか、カードに名前が入ってましたから、しっかりお受け取りを断るか、お返しするかしてきましたから」
詳しくは話そうとしなかったし、オレも聞いて楽しいもんじゃない。
とにかく、手ぶらで帰ってきたんだから、ご褒美やってもいいよな、うん。

食後、洗いもんをオレがしている隣でコーヒーを入れるのが、こいつの役割になっている。
ゆっくりとフィルターの上にお湯を注いでいる穏やかな横顔。
こうして二人並んでのんびりとした時間を過ごせるという事が、どれだけオレが嬉しくって心地よくってくすぐったくって幸せで大切に思ってるか、それはきっとこいつが思っている以上に違いない。
この端正整った顔があと数秒後には崩れるかと思ったら、自然と口元がニヤついてきた。
「何がそんなに楽しいんですか」
不思議そうに言ってきたのには答えないで、「直江、オレ今日カフェオレで飲みたい」とリクエストしてやった。
ノンシュガーブラックで飲むこいつと違って、オレは大抵ポーションか牛乳入りで飲む(どうせお子様味覚だよ)。
なので、このリクエストに対しこいつは何の疑問も持たずに冷蔵庫のドアを開けた。
「…高耶さん」
「ん?何だ、冷蔵庫は開けたらさっさと閉めろよ」
何でもない風に言うオレに対し、男の声は少し震えてるみたいだった。
「これ、何ですか?」
買ってきたばかりで口の開いてない牛乳パックは、一番上の段、上背のある男の目線よりもちょっと下あたりで横になって置いてある。
節高な長い指が、その上にバランスよく乗っかったステンレスのトレーを差していた。
「もう固まっただろ、出していいぞ」
内心バクバクしながらも、努めて平静を装って、冷蔵庫の前で突っ立ったまんまのヤツの横から、オレは自分でトレーを取り出した。
「ほら、コーヒー入れ終わったんだろ。向こういってゆっくりしようぜ」
オレはトレーと牛乳を持って、さっさとリビングへ向かった。
頬っぺたが熱いから、きっとオレの今の顔はあの白い箱を包んでたリボンと同じ色になってるぞ。
いつもなら、たとえ俺が背を向けていても目ざとく気づいてそんな台詞を吐くであろうヤツはあたふたと二人分のコーヒーを色違いのマグカップに注いで、オレの後に続いてリビングへ入ってきた。
大の大人の男二人が並んで座ってもゆとりのある大きなローソファに二人並んで腰かける。
「高耶さん、あの、それ…っ」
「あーん、てしてみろ」
えっえっ、と細かく瞬きしながら、男はオレに言われたとおりに大きく口を開いた。
そこにトレーの上の少し不格好な丸い形のを放り込んでやる。
カシュ、カシカシ…。
口の中で噛み砕かれる軽い音を聞きながら、「ほら、もう1個」
「高耶さん、だから、あのですね、んっ」
開いてる口にもう1粒放り込んで、オレも一つ自分の口に入れた。
ん、結構美味いじゃん。
何を焦ってるんだか、飲み込む時に少しむせた男は、あわててコーヒーを一口飲んで、ようやく落ち着いたらしい。
ほぅと息をつくと、オレの頬に右手を当ててきた。
マグカップを持ったばかりの手は、ほんの少しいつもよりもあったかい。
「…高耶さん、これ作ってくれたの?」
ヤバイ。
こいつを吃驚させてやるというオレの目論見は成功したけれど、そのあとの展開への対処を考えてなかったぞ。
多分、オレの頬っぺたはまだ赤いはずだ。
それにこんだけ近かったら、心臓のドキドキもきっとこいつに気づかれてる。
「ぜっ全部断ってきて、結局ゼロじゃ、お前がかわいそうかな…ってさ。義理だよ、義理っ」
あーもう、オレの声ってば完全に裏返ってるじゃんか。
「義理でもいいです、嬉しいですよ。」
もう片方の手が、するりと俯いたオレのうなじに廻され、そのままオレは男の胸元に引き寄せられた。
嗅ぎなれた男の匂いが鼻先を擽り、その腕の中から、そっと上目遣いで見上げると、そこにはうっとりするくらい蕩けそうな微笑みがあった。
「ありがとうございます、高耶さん」
「…ん」
もたらされた接吻は、今朝こいつがくれたチョコよりもはるかに甘くオレの口の中いっぱいに広がり、オレはその味にいつの間にか夢中になっていった。

「でも、これ本当に美味しいです」
そうこいつが言ったのは、もうとっくにコーヒーが冷めきって、暖房の効いたところに置きっぱなしにしていて冷蔵庫から出した直後のカリカリ感がなくなってしまったそれをまた食べた時だった。
リビングのラグの上、真っ裸で胡坐をかいてチョコを食べる男…こいつじゃなかったら絶対にギャグにしかならない絵だよな。
たとえ精進料理みたいな夕飯でも、こいつは立派にエネルギーに変換できるらしい事を、身をもって知ったオレは、ソファの上にぐったりとした身体を横たえながらそんな事を思ってた。
でも甘いもの苦手なはずなのによく食うよな、こいつ。
「いえ、これくらいの甘さなら大丈夫ですよ。全部がチョコじゃないので、これ中のはメレンゲですか?サクサクしてて食べやすいです」
メレンゲねぇ…全然違うんだけどな、それ。
「その中身、さっきお前夕飯の時にも食ってるから」
「ええっ、だって卵料理なんてなかったじゃないですか」
「誰も卵だなんて言ってないだろ」
じゃあ何なんですか、これ?首を傾げて、さっきまで一口で食べてたのを、今度は前歯で小さく齧ってその正体を見つけ出そうとしているのが、なんだかかわいくって、オレはくすくす笑ってる。
「ここだけ食べると、あんまり味がしないですね。でも食べたことのある食感なんですよね」
くすくすくす。
「なんかちょっと懐かしい感じしねぇ?」
真剣に考え始めた男に少しだけヒントを与えてやる。
「あぁ、そう言われると、そんな感じもします」
「それ、チョコじゃなく黒砂糖だと思って食べてみ」
そうオレに言われて、さらにもう一口小さく齧る。
そして、どうやら思い至ったらしい答えに、鳶色の目がくりっと見開かれた。
「もしかして、お麩ですか?」
あたり。
オレが作ったのは、味噌汁の具にした焼き麩の残りを軽く炙ったのを溶かしたチョコで包んだだけといういたって簡単なものだった。
昔、小遣いが足りなくなってちゃんとしたのが買えなかったと言い訳しながら、美弥がオレに作ってくれたのを思い出したのだ。
「お前がくれたのに比べたら、ものすっごく安上がりでわりぃんだけどな」
「そんな事ないですよ。こういうのって金額じゃないでしょう。相手のことを考えて、どうしたら喜んでくれるか、喜ぶ顔が見られるか。その想いに値段なんてつけられない。それに、あなたの思い出の味を共有できて、とても嬉しいですよ」
ニコリと笑って、もう一粒パクリと食べてみせる。

ゆっくりと咀嚼する口元、顎、そして上下する喉仏。

だるさの残る身体を動かし、ソファからずり落ちない程度まで男のそばににじり寄ると、オレは腕を伸ばして、最後のひとつを口に入れたばかりのその指を引っ張り寄せて、自分の口に咥えた。
指先や爪にこびりついたチョコを丁寧に舐めきっても、そのまましゃぶるオレの頬を、もう一方の空いている手がオレの口の中にある己の指の位置を確かめるように撫で上げる。
「ん、ぁ」
ゆっくりと頬から首筋、鎖骨を辿る少し掌の感触がもどかしくって、思わず舐め続けていた指を口から離して、オレは自分でも自覚するくらい熱のこもった息を吐いた。
「まったくあなたときたら…」
男の指がオレの口元から零れた唾液を拭うけれど、その指先もすでに濡れていて、あまり意味をなさない。
それでも、するりとかすかに触れる感触に、ぞくりと背筋が慄く。
ソファに寝転ぶオレの上に大きな影が覆いかぶさり、オレの視界を埋めていく。
明日の朝、自分の体内時計が正常に働いてくれるのを当てにして、俺はこの後もたらされる快楽に身を委ねることにした…。

end




何、ここで終わりかよっ!的悪逆非道な所業にて大変申し訳ございませんっ。
っていうか、多岐に濡れ場は書けません…orz。
よそ様の書かれるエロ拝見するのは大好きなのにねぇ(それはそれでどーなんだ)。

ご覧くださいました方々。
本当にありがとうございます&お疲れさまでした。

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多岐美影

Author:多岐美影
何とか自分の手が届く範囲にてミラージュの世界を満喫したいと画策中。

生息地:江の島と箱根の間(小田原寄り)
性格:典型的な「O型乙女座」人間とよく言われる
ミラ歴:'94春~'96冬=ミラ第2部だけはリアルタイムその後13年のブランクを経て、2009年春再燃
前科:某ボーカリストの追っかけもどき約20年

ブログサイト:「天空の石」
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