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高誕SS『Ordinary Day』前編

2011.07.23*Sat*
高誕SSと銘打ってますが、
全然まーったくちーっとも、お誕生日とは関係ない内容となっております。
しかも相変わらずのだらだら書きで、長くなりすぎ。


…えっと、直江がなんとも情けないです。
大人な直江がお好きな方には、大変申し訳ございません。
でも、多岐的には、パーフェクトすぎるのよりもこんな一面があってもいいんじゃないかと。

…とりあえず、拙ブログの高耶さんには、"あばたもエクボ"のようです。
(意味間違ってる気もするけど、まいっか)


よろしければ、↓"続きを読む"  からご覧ください。


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    『Ordinary Day』 前編
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一緒に暮らすようになると、相手の意外な面を知る事ができる。

例えば、寝起きがものすごく悪いとか。
起こされて不機嫌になるわけじゃないけど、とにかく起こすのに一苦労する。
昔は寝てる姿すらオレに見せることはしようとしなかったのを考えれば、大進歩というか、甘えてるんだと思えば、めんどくさいけど悪い気はしない。

それに、着るものもこだわりがあるのかと思えばそうでもなかったり。
ブランドものしか着ないイメージだけど、オレが買ってきたユニ●ロのシャツだって気にせず着るし。
靴下なんて、3足1,000円のを普通に履いてる。
なのに、あいつが着るとなんかやたら高級そうにみえるから、不思議だ。

でも、やっぱりあいつに選ばせると何かと高くつくんだよな。
仕事で着るスーツやステーショナリーはちゃんとしたものを持つのはいい事だと思うけど、ついでとばかりに、オレにまで一張羅をあつらえてくれやがった。
こんなの着る機会なんていつあるっていうんだよ、ったく。
それに「長く使うものですから」とか何とか言って、部屋の家具はどこのだか知らないけど外国製のを買い揃えた。
昼寝をするのにオレの身長でも窮屈にならない沈み具合もちょうどいいソファとか、織りが厚くて遮光性のしっかりしてるカーテンとか、部屋を柔らかく優しい雰囲気にしてくれる木目調の手触り滑らかなチェストやテーブルとか、大の男がふたり寝てもびくともしない十分な広さのあるベッドなんかは、ま、オレも気に入ってるけどさ。

それでも、最近じゃオレと一緒になってスーパーの特売チラシをチェックしたり、100円ショップにも平気で買い物に行くようになった。

本とCDの並び順はあいつなりの決まりがあるらしく、適当にオレが片付けると必ずあとで直される。
今じゃ部屋の掃除をしても、書棚だけはオレも手をつけないことにした。
ちなみに、この書棚を含めあいつの書斎と化した部屋の家具は全て本物のマホガニー製だ。
といっても元々あいつが宇都宮の実家で使ってたものを持ってきたんだけど、実際に買ったらいくらするもんだか、オレには想像もつきゃしない。
そのくせ、平日お互いに忙しくって、気がついたら部屋ん中散らかっちまう事があっても気にしない。

そして、一番意外だったのが食いもん。
じつはピーマンが嫌いだって知ってたか。

煮ても焼いても蒸しても揚げても美味いし、色合いもいいし栄養価も高い。
何よりも年中安値で売ってるのが、オレとしては重宝するんでよく使うわけだが、一緒に暮らし始めた当初は、全然オレも気づかなったんだよな。
きっとあいつも料理する俺に気ィつかってがんばってたんだと思う。
でもよくよく見てると、サラダでも野菜炒めでも、絶対にピーマンだけで食べない。
他の野菜だとか肉と一緒に口に入れる。
野菜炒めやチャーハンみたいに他の野菜なんかとごっちゃになってれば大丈夫なんだけど、それだけで食べるのがどうにも苦手らしい。

そんなことに気づいたある日の夕飯。
近所の八百屋で安売りしてたこともあって(一つ2円だった)、オレはちょっとしたいたずら心でその日の献立を決めた。
エッグベネディクトとほうれん草のソテーを付け合せにして、ダイニングテーブルの中央の皿に盛られたのは、しいたけとピーマンの肉詰め。
テーブルについたあいつの顔をちらりと横目に見ながら、炊きたての白飯を茶碗によそる。

「いただきます」
いつものように丁寧に手をあわせてから箸をもち、まずは味噌汁、次にひとくち白飯をほおばる。
それが、こいつのいつもの食べ始める順番。
そして、次に手を伸ばしたのは、予想に違わずしいたけの肉詰めだった。
きのこ類は好物らしく、本当に美味そうに食べてくれる。
オレの料理の腕は、絶対に昔よりも上がってると思う。
やっぱり食べてくれる相手がいるというのが、上達するのに手っ取り早い道だよな。
そんなことを思いながら、オレはこれみよがしにピーマンを美味そうに口に入れた。
「ん、うまい」
ちらりとこちらを見やった男に、んと顎で次を食べるように勧めると、何でもなさそうに、でもオレから見ればせいいっぱいやせ我慢してるのが丸判りな様子で、緑色とこげ茶の塊を箸にした。
一口齧り、ゆっくりと咀嚼して飲み込んで。
窓から風が入り込んで涼しいくらいなのに、わずかだが男の額に汗が浮かんでる…。

「どうした、具合でも悪いのか?」
そう聞いたオレに、ぶんぶんと引きちぎれるぞってくらい頭を振ってかえす。
でも、どう見ても顔がひきつってるし。
「じゃ、なんだ、オレが作ったメシが美味くないのか」
「そっそんなことあるわけないじゃないですか!!」
あせったように言ってくる男の顔をじっと睨んでやる。
しばらくにらめっこ状態が続き、こいつの心境的には蛇に睨まれた蛙といったところか。
とうとう半分食べかけのまま箸にしていた肉詰めを皿に戻すと、観念したようにうなだれた。
こんな姿、世の女たちが見たら興醒めするだろうな、いや、もしかしたら逆にかわいいとか言うのか。
ダメだダメだ、他のヤツになんか絶対に見せるもんかっ。
自分で想像しておいてむかむかしたのが顔に出てしまい、そんなオレの表情が自分のせいだと勘違いした男はでかい図体を縮みこませるようにして、上目遣いでオレを見やった。
しかめっ面をしたまま、男の顔を見ること暫し。
あーもうダメだ。
「…ぷっ、くくっ」
一転、急に笑い出したオレに今度はきょとんとした表情をしてみせる。
30歳もとっくに過ぎたってのに、なんでこいつってばこんなにかわいいんだ。
こういう顔も、昔じゃ絶対に見せなかったし、オレだってこいつの前でこんな笑ったりしなかった。

心穏やかな日々を望まなかったわけじゃない。
それよりも、この男に蔑まされ憐憫をかけられることが怖くてしかたなかった。
男のこと如くを否定し、奪い、縛りつけ、憎しみさえもはらんだ瞳に見つめられる痛みは、快感すら伴った。
ただ、あの頃は知らなかったんだ。
この男の見つめられるだけで身体の芯に火をともすような視線の熱さも、抱きしめられれば目眩を起こして何も考えられなくなるような腕の強さも、ただ名前をよばれるだけがこんなにも幸せになれるなんてことも、知ろうとしなかった。
自分でも目を背けたくなるような醜悪な部分も全て相手に鷲掴みされて、心臓の奥深くに残されたもの、それが自分にとって唯一絶対のものを剥き出しにされた。
その答えが---互いしかいない、いらない。
ただそれだけだった。

何気ない日常、それが、こんなにも愛おしい。


(…後編へ続く)

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Author:多岐美影
何とか自分の手が届く範囲にてミラージュの世界を満喫したいと画策中。

生息地:江の島と箱根の間(小田原寄り)
性格:典型的な「O型乙女座」人間とよく言われる
ミラ歴:'94春~'96冬=ミラ第2部だけはリアルタイムその後13年のブランクを経て、2009年春再燃
前科:某ボーカリストの追っかけもどき約20年

ブログサイト:「天空の石」
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