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高誕SS『Ordinary Day』後編

2011.07.24*Sun*
この記事は予約投稿を設定しています。

実際のリアルの今、
きっと多岐は、今日のミラスポット巡りにわくわくどきどきして、
きっと寝不足で出かける準備をしている頃でしょう。
もしくは、昨夜の高誕パーティ?のお陰で二日酔い(笑)。

とっとりあえず、
ご同行下さってる皆様のご迷惑にだけはなっていないことを祈ろう。



…では、昨日に引き続きの後編をお届します。




よろしければ、↓"続きを読む"  からご覧ください。


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    『Ordinary Days』 後編
---------------------------------------------☆


「いいよ」
「はい?」
目尻に浮かんだ涙を笑ったせいにして拭いながら言ったオレの言葉の意味がわからなかったらしい。
もう一度、今度はちゃんと言ってやる。
「きらいなんだろ、ピーマン。無理して食わなくっていいよ」
今度こそ本当にビックリしたらしく、パッと顔をあげてオレを凝視してきた。
「マジでオレが気づいてないと思ってたのか」
「え、だって・・・えっと、」
「こんだけ毎日一緒にメシ食ってれば、お前が何が好きで何がダメかくらいわかるって」
あ、と口を開いたまま、納得したような困ったような、そしてちょっと悔しそうな顔。
すごいな、たかがピーマンでこんなにいろんな表情が見られるなんて思ってもみなかった。
「・・・すいません」
「別に謝ることもないんだけどな。人間誰でも苦手ってのはあるだろうし」
「はぁ・・・」
「でもさぁ、今までよく食べてきたよな。えらいえらい」
でかい肩幅をちぢこませるようにしてる男に、ことさら軽く聞こえるように言って、テーブル越しに頭を撫でてやった。
子ども扱いされて怒るかと思ったら、頭を撫でていたオレの手を捕らえると、その掌をペロリと舐めやがった。
「ぅわっ、何しやがるんだ!」
あわてて手を引っ込める。
「仕返しですよ」
「ざけんな。いいからとっととメシ食えっ!」
「はい」
先ほどまでのしゅんとした様子がうそみたいに何でもないふうにして、再び茶碗を手に食べ始めたのを見て、オレは男の前の取皿にあった食べかけのピーマンの肉詰めを箸にとった。
「あっ」
「んだよ、いやなら食わなくっていいって言ったろ」
「でも、せっかくあなたが作ってくれたのに」
「いいんだよ、どーせこっちは全部オレが食うつもりでいたんだから」
「…何ですか、それは」
「だーかーらー、お前がピーマン嫌いなの知ってて作ったの。
お前いっつもオレが作ったのなんでも文句言わないで食ってくれるじゃん。
それはそれで嬉しいんだけどさ、でもやっぱそれって気ぃ使ってるわけだろ。
それよりも嫌いなら嫌いって言ってくれるのも、ありなんだよな」

自分が作ったものを美味いと言って食ってくれるのは本当に嬉しいし、次に何をつくってやろうかと考える励みにもなる。
でも、人にはそれぞれ好みってものがあるし、どうせつくるならこいつの好きなものをつくりたい。
無理や我慢はしてほしくない。

「すいません、かえって余計な気をつかわせてしまったんですね」
「オレじゃなくってお前だろ。無理して食いやがって」
「無理って…そんなつもりはなかったんですよ。確かに苦手ですけど、あなたが作ったのならちゃんと食べられますし」
「なんだよ、それは」
答えなんてわかってるはずなのに、聞いてしまう。
「愛の力ってやつでしょうか」
いけしゃあしゃあと言ってのけるが、オレの中にはさっきの額汗のこいつの表情がしっかり残ってる。
「ほー、んなこと言ってると、明日の夜はフルコースにしてやるぞ」
お浸しだろ、サラダに、味噌汁の具に、あぁ今日は焼いたから明日はつみれを入れて揚げてもいいよな。
指折りながらメニューをあげていくと、ぐっとつまったような顔をして、
「高耶さ~ん」
こいつのこんな情けない声なんて、めったに聞けないよな。
いつもこいつの饒舌に、というか口八丁に遣り込められっぱなしだから、たまにはこんなのもいい。
しゃーない、このくらいで勘弁してやるか。
「ま、食ってくれるのはありがたいが、どーしてもコレは無理って時は言うこと」
味噌汁をすすりながらオレが言うと、はい、となんとも行儀のいい返事をよこして男は三度箸を取り直した。

「でもさぁ、お前がピーマン嫌いなのって昔からだっけ?」
言ったとおり愛の力なのか(って、口に出さなくってもこっ恥ずかしいよな)、結局2個なんとか食べた男が食後のお茶を淹れてくれてるのを見ながら、思ってたことを聞いてみた。
料理はからきしだけど、コーヒーやお茶なんかは、オレよりも美味いのを淹れる。
コーヒーに関しては自分でも美味いのが飲みたいから覚えたって言ってたけど、日本茶はさすが寺の息子ってところか。
「唐辛子などはすでに江戸の頃からありましたけど、日本でピーマンが食卓に出廻るようになったのって、戦後じゃないですか。ですからほとんど食べたことがなかったですね」
はいどうぞ、ん、湯呑を受け取って、一口飲んで。
「ちがーう。んな古い宿体の頃の話じゃなくって今だって。よくお前にあちこちメシ連れてってもらってたけど、そん時は全然そんな感じなかったじゃん」
「あ、それは・・・えっとですね」
なんだよ、また言いよどんだりして。
ずずっと音を立ててお茶を啜る。
オレがやると行儀が悪いとかいうくせに自分でやってて気づいてないらしい。
ほうっと一息つき、言葉の続きを待つオレを見やって、中身が半分に減った湯飲みを両手で包みながら、ぼそぼそと白状した。
「・・・できるだけ避けてましたから」
既に自分がなじみになっている店では、こいつのピーマン嫌いを知ってくれてるから出さないようにしてくれたし、初めて行くような店では予約の段階であらかじめ避けるように頼んでたというのだ。
しかも、「連れが苦手」だからと理由にして・・・って、連れってオレだろうが。
そりゃあな、いい歳した見栄えもよろしい大の男が自分の好き嫌いとは言えないんだろうけど、言うに事欠いて、オレをダシにするなよなぁ。

いつも大人の余裕かまして澄ました仕種で、自分に寄せられる廻りの目も整然と受け流して、格好いい男なのに、本当にオレの知らないところでカッコつけてたなんて。
きっと、これだけじゃない。
どんな時だって、オレの前でこいつは格好いい男であろうとする。
見栄っ張りと言ってしまえばそれまでだろうけど、オレの知らないところで、見えない部分で、こいつはいろんな事考えて、努力して。
怒るとか呆れるとか、なんかもうどうでもよくなってきた。

「ありがとな」
え、怒鳴られるか馬鹿にされるかとでも思ってたらしい男は、思ってもみなかった言葉を返されて戸惑った様子だ。
「・・・高耶さん?」
「聞くなよ、オレだってよくわかんねーんだから」
嘘だけど。
いつだってオレの一歩後ろについているか、オレを背中に守ろうとするかしてた男が、今はオレと同じ肩の位置に立っている。
肩肘張ることなく、ありのままを見せてくれる。
それが嬉しくってつい口から出た言葉。
オレの隣にいてくれて、ありがとう。

「さて、と。台所片づけるかな」
飲み終わった湯呑を片手に立ちあがる。
「手伝いますよ」
男も、最後の一口を飲みほして、同じように立ちあがった。
「当たり前だ」
ふたりで、手分けして空になった食器をシンクへと持っていく。



何気ない日常。
Ordinary Days-






最後までご覧くださいました皆様、ほんとーっにお疲れさまでした。
ただただ長いだけのヤマもなければオチもない、更にイミもない。
まさにタイトル通りでございます。

でも、3月の震災からこちら、
本当に何気ない当たり前に日々を過ごせることがどれほど大切なのか、
何度も感じて参りました。
高耶さんにも直江にも、そんな日々を過ごしてほしかった…そんな気持ちで書かせていただきました。

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多岐美影

Author:多岐美影
何とか自分の手が届く範囲にてミラージュの世界を満喫したいと画策中。

生息地:江の島と箱根の間(小田原寄り)
性格:典型的な「O型乙女座」人間とよく言われる
ミラ歴:'94春~'96冬=ミラ第2部だけはリアルタイムその後13年のブランクを経て、2009年春再燃
前科:某ボーカリストの追っかけもどき約20年

ブログサイト:「天空の石」
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