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2時間早いですが…

2012.05.02*Wed*
直江…もとい、橘義明どの。
お誕生日おめでとうございます!!。

明日の当日は、御舅様方のお祭りに行く予定です。
でも雨が止んでくれません。
そういえば、去年も雨降りました。
…え、義明さんってばもしかして雨男?
そりゃあ、イイ男は水も滴るかもしれないですけどぉ。

そんなこんなで、
ちょっぴりフライングですが、
予告通りに、直誕SS…というか、10000オーバー御礼SSです。


よろしければ、↓"READ MORE"  からご覧ください。

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    『Wisteria』
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高耶さんが帰ってこない。

うららかな休日の昼下がり。初夏というにはまだ早い、柔らかみのある日差しの差し込む白いソファで高耶さんが昼寝をしていたのは、2時間程前の事だった。
折角の休日だというのに、持ち帰ってきていた仕事を片付けていた俺は、リビングからの物音がしなくなったのが気になり、休憩と称し書斎から彼の様子を見に出てきた。
ベランダ近くの床には、ピシリと、でも太陽のぬくもりを損なわないようにふわりと畳まれた洗濯物。窓が少し開いているらしくカーテンの裾が時折風に揺れている。穏やかな光景になじむように、小さく聞こえたのはくぅくぅという寝息だった。
ソファの肘掛に頭を乗せて、気持ち良さそうに眠っている姿は、見ている此方までも幸せにしてくれる。常に前を見据え凛とした輝きを秘めた黒曜石のごとき瞳も今は閉じられた瞼に隠されてしまっている。すらりとした鼻筋。吐息をつむぐやや厚めの唇が少しだけ開いているのが、普段の彼よりもあどけなく感じさせている。片足だけがソファからずり落ちたらしく、仰向けになった洗い晒しのコットンシャツの胸が寝息に合わせて上下するのがよく見えた。起こさないようにそっと彼の前に跪く。

まるで眠れる森の美女か白雪姫だな。

くすりと此方の笑う気配が感じられたのか、上を向いていた顔が少しだけ斜めに傾げた。起こしてしまったかと思ったが、どうやら熟睡しているらしくすぐにまたくぅくぅと規則正しい寝息が聞こえてきた。
暫くその表情を見つめていたが、これほど近づいても起きる気配のない彼に少々寂しさを感じてしまった。勿論、こんな姿をしているのは、此処が誰にも邪魔されることない安心できる場所だと彼が思ってくれている証拠だというのは判っている。それでも、今こうして目の前に俺がいる事に気づいてくれないのがなんとなく面白くないのは、多分に自分の我儘なのだろう。
お伽話の姫君たちは、王子のキスで目覚めたが、果たして寝ているのが王子の場合はどうなるのだろうか。
先ほどの寝返りとも言えない動きで、キスをするにも丁度いい具合の顔の角度だし…と、そっとその唇に己のそれを触れさせた。
ほんのいたずら心からのつもりだったが、薄く開いた隙間から舌を差し入れると、芳香漂う蜜に誘われる虫のようにそこから離れることができなくなっていった。歯列をなぞり、上顎をつつき、花弁の奥に潜む雌しべのようそっと舌先をそれこそ蜜を食むように吸い上げた。

「ん…ふっ」
その甘い唇を味わっていると、さすがに息苦しくなってきたらしく、ちょっと眉をしかめた後二つの黒く輝く宝玉が瞼の下から現れてきた。しっかりと焦点を結ばずどこかぼんやりとしたその瞳に自分の顔が映し出される。このままいつでも自分だけを見ていてほしい。そして、自分の瞳にもこの人の姿だけを映していたい。
一旦離した唇をまた押し付けるようにして重ね、先ほどよりも強く吸い上げる。目覚めたばかりでまだ意識までは覚醒していなかった彼だが、暫くすると身動ぎしだした。
「……んっ…んんーっ」足をじたばたさせ、握り拳を作った手をぴたりと合わさった胸と胸の間に捻じ込んでくる。しょうがない、しぶしぶといった体で口づけを解いてやると、「ぷはぁーっ」大仰に息を吐き出した。
「てめっ、このっ、人が気持ちよく寝てるとこ、いきなり何すんだよっ!」
紅く濡れた唇をぐいっと手の甲で拭ってしまう。それはあまりにも色気がないのではと思ったが、上気した頬といい、溢れた唾液を飲み込む喉といい…あぁ駄目だ。このままこれで済ますわけにはいかない。
もう一度彼をこの胸に閉じ込め、片手でその顎を持ち上げようとしたのだが、
「っいい加減にしやがれ!」
…ソファに横たわったまま、見事な膝蹴りが俺の鳩尾に決まった。体勢を整え、ソファの上に仁王立ちになった高耶さんの怒声が腹を押さえ蹲った俺の登頂部に落とされた。
「てめぇは、せっかく気持ちよく寝てる人間の邪魔して何が楽しいんだよっ!ってか、年がら年中サカってんじゃねーっ!!」
そんなこと言ったって、あんな無防備に寝てるあなたがいけないんですよ。
「なんか言ったか」……いいえ、何も。

フンッと大きく鼻息をつくと、ソファから降り、心の中で返事をするばかりの俺の横をダンダンと足音高くキッチンへと向かった。ガチャリと冷蔵庫を開けたと思った途端、
「だぁーっ、牛乳もねーじゃんかっ!!」
“も”って、それは八つ当たりというか濡れ衣というか、それも俺のせいですか?。
ようやく腹の痛みが治まり(近年まれにみるクリーンヒットだった)起き上がった俺の目の前をまた横切り、今度は自室へと向かうとすぐに最近お気に入りのミリタリー風ショートジャケットに袖を通した姿で現れた。
「誰かさんのせいで、眠気もぶっ飛んじまったし買い物がてら散歩行ってくる」
あ、それじゃあ一緒に…
「ひ・と・り・で、行ってくる。ついてくるなよ。後つけてなんて来やがったら、コ・ロ・ス」
此方の心臓を突き刺し凍えさせるような鋭い一瞥をくれると、そのまま出て行ってしまった。


それから、もう既に2時間が経とうとしている。

高耶さんが出掛けた時には清々しい青空が広がっていたのだが、徐々に雲行きが怪しくなり、つい十数分前からポツポツと雨が降り出し、今では本格的な降り方になってきた。
高耶さんの傘は、玄関の傘立てに置かれたままだ。どこかで雨宿りするなり新しい傘を買うなりして濡れていなければいいのだが。
迎えに行きたくても、携帯の電源を切っているのか掛けても繋がらないし、GPSも反応しない。思念波を送ってみても一向に返事がない。いくら買い物もあるとはいえ、散歩というには時間がかかりすぎる。一体何処まで行ってしまったのか、もしかして雨のせいでスリップ事故に巻き込まれたとか、それとも何か事件にでも遭遇してやしないだろうか。
あぁ、もうこのまま部屋でじっと待っているのも性に合わない。まずはコンビニとスーパーとを廻って、あとは行きそうな場所を手当たり次第に探しに行ってみるか。
そう決めて、車の鍵を手にした時、俺の携帯から高耶さん専用着信音が鳴り響いた。勢い勇んで携帯を見ると、メールが1件入っている。

「件名:迎えきて」

本文に書かれているのは、隣市のはずれにある市営公園の名前だけ。このマンションからはゆうに20km以上の距離がある。あんな処まで歩いていったのか。「すぐ行きます」そう返信をして、持ったままだった車の鍵を再度握り直して、俺は玄関へ向かった。

途中信号に何度かタイミング悪く引っ掛かり、じりじりした思いをさせられながらようやく目的の公演に辿り着いたのは、それから約30分後のことだった。正門前の駐車場にウィンダムを停めて辺りを見渡すが、晴れていればピクニック気分の家族連れやスポーツに興じる学生などがいてもおかしくはない公園内も、雨が降っていては人の気配も感じられず、駐車場と正門の周りを囲むように植えられた芝桜が自然のシャワーを浴びているだけだ。てっきり目に着くところにいてくれると思っていた相手もいない。
携帯の通話記録から一番上にある番号に掛けると、
「もしも…」
「高耶さん、何処にいるんですかっ、濡れてませんかっ、寒くないですかっ、怪我なんてしてないですよねっ」
2コールで出たと思った途端、心配が口からついて出た。
「……」
「高耶さんっ!!」
返事のない相手の様子を少しでも伺おうと携帯を耳に押し当てると、かすかに聞こえてきたのは、くくっというくぐもった声。どうやら笑いをこらえているらしい。
「…えっと、高耶さん?」
一体どうしたのかと問おうとすると「や、悪い。大丈夫だから。怪我もしてないし、寒くもない。ちょっとは濡れてるけど屋根あるから大したことないし」
出掛ける前の不機嫌はどうやらどこかへ去っていったらしい。それどころか、どこか上機嫌な様子の彼の声。
「あのな、テニスコートの奥の池わかるか。そこの四阿にいるから、そこまで迎え来て」
そう言って、一方的に通話は切れた。
後部座席から傘を2本持ち、正門の案内板で四阿を確認するとテニスコートに向かって走り出した。

公園内の遊歩道はちょっとした林の中を行くような感じで、半月前なら薄紅色の桜のアーチが見事であっただろう新緑の枝がちょうど雨よけになってくれて、傘を差さなくても然程濡れるような事はない。
しばらく行くと、正面向こうにこちらも芝桜にぐるりと囲まれた小さな池が見えてきた。テニスコートと背中合わせになるような場所に小さな四阿が池に張り出すように建っている。大人が4、5人も入ればいっぱいになりそうな屋根の下、高耶さんは此方を背にして佇んでいた。
凛と伸びた背中、両腕で自分を抱きしめるようするのは彼のクセ。周りの緑になじむジャケットの下から続くすらりとした足をブラックジーンズが包む。少し濡れたと言っていたいつもよりも少しだけ膨らみのない髪は、逆に艶やかさを増しているようだ。
気配に気づいたのか、彼が此方を振り向いた。
「よっ」
片手をあげる彼に此方も2本の傘を持った手で返事を返す。
「何処まで行ったのか心配しましたよ」我ながら言葉ほどは心配も責めの色も感じさせない穏やかな声が出た。
「ん…オレもこんなトコまで来る気なかったんだよな。なんも考えてなかったというか、お前の悪口言いながら歩いてたら、こんなトコまで来た」
まだ、先程の安眠妨害を根に持ってるだろうか。ちらり彼の横顔を覗こうとしたら、口端にシニカルな笑みを乗せた彼と目があった。
「…まだ怒ってます?」
「怒ってるようにみえるか」
「…いいえ」
「んじゃ、そうなんだろ」
そう言うと、また視線を前方へと向けた。
「な、あれ」
くいっと顎で示された視線の先を辿る。
自然の形を残した池の対岸は剥き出しの崖にスギの木が張り出していて、その枝に絡みつくように青紫の花穂が幾筋もの小さな滝を描いていた。
「…フジですか」
「ああ、まだ時期的にはちょっと早いんだろうけど、ここは水辺で日当たりがいいからな。自生のがどんどんでかくなったらしい」
いわゆる庭園などにある藤棚で育てられているものよりも色がやや薄い。これほど多く花房があってもうるさく感じないのは、多分にこの色合いのせいだろう。
雨に濡れながらも静かに咲き誇る、たおやかな優しい色彩。見ている此方の心を落ち着かせ、ほっと肩の力を抜いて、癒しを与える。―はるか昔、そんな女性がいた。そう、あれはその名に相応しい女性(ひと)だった。
時には母のように、時には姉のように、そしてこんな俺に思慕の念を抱いてくれた。
互いに換生したてで生前のこだわりを拭い捨てる事ができなかった人への遣り切れなさを、傍らにいながらどんな思いで見ていたのか。何も返すことはできなかったが、今こうしてふたり並んでいる姿を見たなら、きっとあの女性は黙って微笑んでくれるに違いない。
一歩彼の背中に近づくと、此方を見ることなく、過たずに胸の中にもたれ掛かってきた。
「…誰のこと考えてた」
「あなたの事以外誰を思えと?」そう嘯いてみる。
「ふうん…」
「あなたは誰の事を考えてたの?」
逆に問いかけてみる。
「さぁ、誰だろうな」
お互い、口には出さないが思う女性は同じなのは、懐かしそうに花穂を眺めるその瞳が語っていた。
「綺麗ですね」
「あぁ」
「来年もまた見に来ましょうか」
「あぁ」
傘を小さな木のテーブルに引っ掛け、両腕を彼の腰にまわすようにして後ろから抱きすくめると、肩越しに上目遣いの視線とぶつかった。そのまま顔を寄せると、長い睫毛が伏せられ黒曜の瞳が閉じられた。

夕暮れにはまだ日があるはずだが、さすがに雲の多い今日は暗くなるのが早いらしい。
だいぶ小康状態になった雨の遊歩道にも照明が落とされる中を、ふたり肩を並べて歩く。俺としては手をつなぎたいところだが、いくら人気がないとはいえ、大っぴらにそんな事が出来るかと、言下に却下されてしまった。
駐車場まで戻ってくると、彼はもう一度公園の奥へ振り返った。
「なぁ」
助手席のドアを開けた俺に声をかける。
「来年なんて言わずに、晴れたらまた会いに来ようぜ。きっと明るい太陽の下で見たら、もっと綺麗だ」
えぇ、そうですね。晴れたら、また。そして来年も、再来年も、その先も毎年。俺たちふたりがともにある限り、その姿を見せに来ましょう。きっと彼女はあの優しい表情で迎えてくれるに違いないから。


~fin.




ここまで、お読みくださいましてありがとうございます。

毎回タイトルをどうしようか悩むのですが、結局そのものズバリとなりました。
でも、この名前の響きが好きです。

高耶さんBDでは、もう少し甘々が書けるといいなぁ…、
などと、今から自分の首絞めるような事を言ってみる。


さてさて。
お口直しと申しますか、
明日の直誕当日には、あの宝物をご紹介させていただきます!!。
えー、拙作を今日に前倒ししたのは、
当日はちゃんと本命がいらっしゃるからなんですね。

それでは、また明日。

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多岐美影

Author:多岐美影
何とか自分の手が届く範囲にてミラージュの世界を満喫したいと画策中。

生息地:江の島と箱根の間(小田原寄り)
性格:典型的な「O型乙女座」人間とよく言われる
ミラ歴:'94春~'96冬=ミラ第2部だけはリアルタイムその後13年のブランクを経て、2009年春再燃
前科:某ボーカリストの追っかけもどき約20年

ブログサイト:「天空の石」
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