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2014高誕SS『HURRAY FOR WORKING LOVERS』前編

2014.07.22*Tue*
なんだかもう、例年のことではありますが、
自分の誕生日よりも大事になっております。
(ってか、自分のはもはや忘れたい境地に入り込んでる…。)

イベントやオフ会に参加させていただいて、
ジェンヌの皆様に触発されて、今年はちゃんと自分でもお祝いしたいな、と。
先日の七夕SSは、だだだーっ!と勢いで書き上げたのですが、
いざ高誕本番…となったら何を書いていいのかわからなくなってしまいました。

で、結局。
もう何年も途中までで放置しっぱなしだったSSを引っ張り出して、
高誕に絡めたら、なんとか書きあがりました。
しかも、思った以上に続きが長くなってしまい、
明らかに放置してた前半と雰囲気も違うし・・・ってことで、前後編になります。

これでお祝いになるのか!?ってなくらい糖度低いですが、
そこは他のジェンヌ様方の素晴らしい品々で補充いただくとして、
箸休め程度のつもりでご覧いただければ幸いです。

あ、前半は、とにかく直高いちゃつきません。
今回高耶さんの一人称なんですが、
どうも多岐が書くと、相手(今回は直江)が淡白になってしまう・・・。
あの直江が淡白・・・ありえねーっ!!って自分で思いながら書いてました。
でも、それ以上に高耶さんが乙女になってますが。
っていうか、今時中学生カップルでももっと濃いだろーっって感じです。

後編は、23日ジャストにアップするよう予約投稿しておきます。

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  『HURRAY FOR WORKING LOVERS』
-------------------------------------☆

ヴヴ・・・ッ。
背中に社名のロゴが書かれたライダーズジャケットの胸ポケットに入れていた携帯端末がメールの着信を告げたのは、丁度赤信号でバイクを停止させたところだった。
路肩へバイクを寄せながらポケットから端末を取り出し、「集荷配達依頼情報」の通知を開き、そこに記されたURLにアクセスする。
バイクでここから5分と掛からない設計事務所から横浜にある建設会社への配達依頼。今からなら行って帰っても7時前には戻って来られるだろう。
「了解…と」
仕事を請けるか否かの確認画面から「YES」を選び送信して胸へしまうと、上げていたヘルメットのシールドを元に戻し、海岸通へ向かって左折した。

第一京浜を南に向かって走る。

…さすがに暑いな。
梅雨明け直後、本格的に日差しが強くなって、走ってる時の風こそ気持ちいいが、信号待ちなんかで止まった途端に襲ってくるエンジンの熱とアスファルトの照り返し、それにメットの中はサウナ状態と、バイク乗りにはかなりキツイ時期になる。

メールやネットでデータのやり取りができる昨今、バイク便業界自体厳しい状況にあるらしく、授業が終わったあとの数時間で受けられる仕事の件数も内容もかなり限られる。
もっと効率のいいバイトに変えようかと考えることもあるけど、今日みたいにある程度の距離も走れると、やっぱり辞めたくなくなるんだよな。しかも何時から何時までといった定時勤務ではないので、帰りが遅くなることも多少はあるけれど、基本的に企業間での配達なので真夜中になることもないし、土日は休みだ。
つまるところ、誰かさんが家にいるときには一緒に家にいられるのがこのバイトの最大のポイントだったりするわけで。

横浜駅の手前からみなとみらい地区に入ったところで、一旦バイクを停め、配達先の住所を確認する。
まだまだ開発途中らしく、来るたびに景色が変わって驚かされる。この辺りからでも、以前は観覧車が見えたはずなんだけど、ここ数年で次々に建てられた新しいビルやらホテルやらですっかり隠れてしまった。
その中でも比較的古いビルの裏手に廻り、守衛所で6階にある建設会社に配達に来た旨を伝えると、入館証を渡され、1階ロビー受付へ行くよう言われた。
へぇ、珍しいな。
この手のオフィスビルだと、搬入業者とかは搬入口までしか入れずに荷受人が来るのを待つか、メール室で足止めなのに。
守衛に指示された駐輪場にバイクを停め、リアボックスからA4サイズの書類ケースを取り出し、通用口からビルの中に入ると一転して外気の蒸し暑さから解放される。思わずホッとしながら、ジャケットの前ボタンを開けて汗ばんだシャツの襟もとを寛がせた。
あー、涼しい。
吹き抜けになった1階ロビーを横断するようにして、表玄関前の受付に向かう。
「6階のS建設設計企画部の有田さん宛の書類を届けに来たんですけど」
「はい、有田ですね。少々お待ちください」
守衛から連絡が回っていたらしく、受付にいた二人の女性のうちの一人が内線をかけたら、すでに上階からこちらに向かってるとの事だった。
他にもいる来客者や受付に来る人の邪魔になると悪いので、受付脇にある観葉植物の隣に身体をずらし、エレベータから荷受人が降りてくるのが見える位置に移動する。待ってる間に端末を取り出し配達先到着の報告を入れてると、受付の二人の小声が耳に入ってきた。
「有田さんのとこって、さっきのでしょ」
「そう、打ち合わせ終わったから一緒に降りてくるって」
「やった」
どことなくそわそわした感じの声。
何だ。
オレと同じような配達業者やアポイントの応対などの人間が受付に来るたびに、カウンターの横にただ突っ立てるだけのオレを胡乱気に見てる気がして、居心地がよろしくない。早いとこ、荷受人が来てくれないかと落ち着かなくなってきた時、チンと軽い音とともに降りてきたエレベータのドアが開いた。

え、何で?というのと、あぁ、そういうことか、というのと。
正反対にも近い言葉が、オレの頭の中に浮かんだ。

グレーの作業着の袖を肘までまくり上げた40代後半くらいの男性と、一方こちらは黒に近い紺地のサマースーツをピシリと着こなした背の高い30半ばの男。会話を交わしながらエレベータから出てきた二人の内若い方の男が、何かに気づいたようにこっちに顔を向けた。
瞬間、オレの視線と琥珀色のそれとが絡み合う。ビジネス然としていた男の頬がかすかに動いて、目元を柔らかくする。
「えっ、えっ、今笑った?」
「きゃー」
10m近く離れてて、ほんのわずかな表情の動きがよくわかるな。
小声で交わされる女性のいい男に対する視力のよさにほとほと感心しながらも、オレは緩みそうになる顔の筋肉に力を入れた。

「MB便さん、待たせてすまないっ」

作業服で小走りに近寄ってくるのが、荷受人の有田氏らしい。声を掛けられ、オレは男の姿に留まったままの視線をはずした。
「Yデザイン様より預かってきました」
「やあ、助かったよ。今日が納期だってのにサーバ止まっちまってデータ届かないんだからなぁ」
オレに言ってるのか独り言なのか、ぼやきながら受取伝票にサインを入れてその場で書類ケースを開封した。
「おー、これだこれだ。あ、悪いんだけどすぐに済むから、もうちょっと待っててくれな」
「あ、はい」
今回の仕事は往復便だ。
ここでまた荷物を預かり、依頼主である東京の設計事務所に届ける。行ったまんまにならないから、ガソリン代も無駄にならずに効率がいい。
いい感じの距離バイクを走らせることができて、行きも帰りもバイト代が出て、着いた先に何度見ても見飽きたりないいい男がいて。多少待つことなんて、全然問題なしだ。愛想よく返事をして顔を上げると、また男と目が合った。
ちくしょ、目が笑ってやがる。
しかめっ面で睨み返したら、急に片手を口元に当てて咳き込み始めた。
「やぁん、風邪かしら」
「大丈夫かなぁ」
相変わらずひそひそと交わされる声。
…あんだけわざとらしかったら、本物の風邪のわけないだろ。

「橘さん、お待たせして申し訳ないです。これで書類揃いました」
「いえ、こちらこそ急かすような真似をしまして、申し訳ございません」
「いやいや、こちらのせいでご足労頂いたんですから、とんでもないですよ」
ロビー内にある小さなテーブルに移動した二人の会話はよく聞こえなかったけれど、ふーん、仕事してる時って、ああいう顔してるんだな。
相手の話に相槌を打ちながら、今オレがもってきた書類に目を通す。怜悧で真剣な横顔、でも怨霊に対峙してる時の切迫したような緊張感はない。

それにしても、ただ待ってるだけというのは、結構しんどい。
さっきと同じように観葉植物の隣に突っ立って、狭いブースの中で長い足をもてあまし気味に組んで椅子に座る男を見やる。
さすがに喋るのはやめたらしいが受付嬢ふたりがまだちらちらとそちらに視線を送ってるのが、横目に入った。フロアに居合わせた女性たちも、ほとんどが似たような状態で、だんだんオレの腹ん中にもやもやしたものがこみ上げてきた。
くそっ、あれはオレのだ。
誰も見るな。
大声で言えたら、どんだけすっきりするか。
もやもやむかむか、いらいら。

きっとあと1分待たされたら、男の胸倉ひっつかんで、「早くしろっ」と啖呵を切っていたかもしれない。
もちろん実際にそんなことをしたら、周囲の目を集めるどころか、あいつの仕事そのものの邪魔をしてしまうのは頭じゃわかってる。わかってても、やっぱり女の秋波を悠然と受け流す姿をただ見てるだけなのは、我慢するにも限界がある。
そんな絶妙なタイミングで、打ち合わせしていた二人が立ち上がった。

「いやぁ、これで一仕事終えましたよ」
「あとは、こちらで先方と詰めて、結果をご報告いたします」
「お手間かけますけど、よろしくお願いしますね」

肩の荷が下りたといわんばかりの顔した有田氏と、そんな相手を安心させるかのような穏やかな表情の男。
さっきの打ち合わせで見せた真剣な表情は、確実に仕事をこなしてくれるであろう安心感を。
今のこの穏やかさは、また次も一緒に仕事をしたいと思わせる期待感を。
相手に抱かせ、そして、それを裏切ることなく成果を上げるであろうことが、確信できてしまう。
あぁ、こいつはしっかり社会で認められた正真正銘の男なんだな。なんだか誇らしいような、ちょっと悔しいようなそんな気分。

「では、私はこれで」
「わざわざありがとうございました」

首にかけていた入館証を外し相手に手渡すと、受付に向かって軽く会釈をしてから男は正面入り口に向かって歩いていった。受付の二人が小さくきゃっと声を上げたのが聞こえた。
ちぇっ、エレベータから降りてきた時だけかよ、こっちに気かけてきたのは。
結局あのあとは、こちらからの視線に気付いていたはずなのに一顧だにせずに行っちまいやがった。そりゃあ仕事中だろうけど、なんとなく肩透かしというかつまんないというか、寂しい。

「さあて、MB便さん。待たせちゃって申し訳なかったね」

声をかけられて、はっとする。
立ち去る男の後ろ姿につい(悔しいが)見惚れてたのに気付かれたかと思ったが、有田氏はつい今しがたまで打ち合わせしていた資料を書類ケースからもう一度頭だけ出して中身を確認しているところだった。
「ん、よし。これで間違いない。それじゃ、これ頼むね」
はい、と手渡された書類ケースを受け取り、一礼して、こちらは男の出て行ったのと反対側にある通用口に向かった。

(後編につづく)




ひゃはは…。
絡んでないどころか、最初に視線かわしただけで帰っちゃっいましたよ、あの男。
っていうか、タイトルありきで書き始めたので、
仕事終わっちゃったら、そこで満足してしまったという…。

あ、タイトルは某3人組のリーダーのソロ曲です。
本当は1週間(7日)ぶりに会えた恋人の歌なんですが、
直高はせいぜい7時間しか離れてません(笑)。


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多岐美影

Author:多岐美影
何とか自分の手が届く範囲にてミラージュの世界を満喫したいと画策中。

生息地:江の島と箱根の間(小田原寄り)
性格:典型的な「O型乙女座」人間とよく言われる
ミラ歴:'94春~'96冬=ミラ第2部だけはリアルタイムその後13年のブランクを経て、2009年春再燃
前科:某ボーカリストの追っかけもどき約20年

ブログサイト:「天空の石」
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